冬の河原で芋煮をする話

冬に大阪の河原で、芋煮をやったらとても楽しかったのでレポートしたい。

 

f:id:nadegata226:20181216101910j:image

 

芋煮といえば、里芋を中心に、肉や野菜などの具材を煮込んだ鍋料理。東北地方の一部ではソウルフードともいえる存在で、秋になると仲間内で河原に集まって芋煮会をやるのが風物詩だそうだ。

 

ところで俺はもともと屋外でビールを飲んだり食事をする行為(ピクニックと総称)が大好きなんだけど、例年気温が10度を割り込んでくるあたりからつらくなってくる。今年も11月中頃に今シーズンのピクニック納めとして、最寄りの公園でソロピクニックを決めたところだった。

f:id:nadegata226:20181215234031j:plain

ソロピクニックの例。これは日差しの眩しい春シーズンの様子

 

外でメシを食いたいが寒さには勝てぬ。ああ来年の春が待ち遠しい。そう悶々としていたところに思いついたのが、芋煮だ。芋煮の本場である東北が秋にやるのなら、それより温暖な大阪は冬の初めに芋煮をしても問題あるまい。むしろ適度な寒さのなかでアツアツをいただくのが芋煮の醍醐味であるとすれば、大阪における芋煮最適時期は今を置いてほかにはなかろう。

 

このような思いつきに友人らを巻き込み、俺たちは師走の河川敷に降り立った。

 

f:id:nadegata226:20181216094445j:plain

空は青い


 

あー、うん寒い寒い。この日の大阪は最低気温4度。少し調べたら東北では秋に芋煮をやるといっても、宮城では主に10月、山形にいたっては9月が主流らしい。ということは平均気温は10度くらいか…

 

これは早く芋を煮ないとまずい。外でメシを食うには手際が命だ。寒かったり暑かったり、腹が減っていたりすると、分別ある大人でも不安感から不満が溜まりやすい。今日の芋煮は俺の発案だ。不手際があれば仲間からヘイトを向けられる矛先は俺だ。

 

具材は自宅で下準備してきた。肉はラップに包む。野菜はカットしてジップロック。そして里芋は皮を剥いて下茹で。各種の調味料も適量をあらかじめ調合し、小さなペットボトルに詰めてきた。これらをすべて鍋に投入し、一煮立ちさせて、白ネギがくたっとすればすぐにでも食べられる。カンペキだ、カンペキな段取りだ。そのはずだった。

 

誤算は火力だった。火元は友人に持ってきてもらったガスコンロだったのだが、寒さに加えて鍋がデカイこともあり、なかなか湯が沸かない。そういえば本場では、即席のかまどをこしらえて、薪の大火力で煮るのが正統派らしい。結局すべての具材がアツアツに煮えるまでに45分くらいはかかったような気がする。当然、空腹状態でそんなに待ってはいられないので友人が隣に設置した焚き火台でししゃもを焼いて食った。炭火のいい香りがしてめちゃくちゃうまかったが、みんなの関心は急速に焚き火に移っていった。

f:id:nadegata226:20181216113802j:plain

本気さを伺わせる焚き火台



 

 

そうはいいながらも、やっとできあがった芋煮はうまかった。調味料の塩味、肉の脂と白ネギの甘み(砂糖もどさどさ入ってるけど)のバランスがよく、何より寒さのなかでアツアツの汁物を食べるのがうれしい。友人からの評判もまずまずだ。

f:id:nadegata226:20181216102654j:plain

七味を入れるとうまい



 

余談ながら、俺はこういうイベントで失敗をするのが極端に苦手だ。ミスったけど楽しかったから結果オーライ、と笑って済ませられない性分で、コケると3日は引きずる。だから事前に自宅で予行演習をしてきたのだが、実はそのときはどうも味が決まらないような気がしていた。芋煮には、どのレシピを見ても昆布やカツオなどのダシが入らない。味噌or醤油、酒、砂糖、以上!という硬派な味付けなのだ。なんとなく物足りないのはダシ不在によるものだろうと思っていた。しかし本番ではこの物足りなさを感じなかった。調味料の配分はたいして変えていない。違ったのは肉の投入量だった。そうかそうか、芋煮のダシは贅沢にも肉からとるのか。ということで俺のような芋煮初心者の方は、失敗が恐ければこれでもかと肉を入れるといいと思う。

 

その後、芋煮には出来合いの餃子を追加、最後はうどんも入れてきっちり完食した。そしてその間にも焚き火の上では、しいたけの焼き物、焼きネギ、鶏の味噌炒め、鮭ハラスのネギ炒め、おしゃれなチョコバナナなどが友人の手によって仕上がり、そのすべてがはちゃめちゃにうまく、大満足で芋煮会を終えた。いや認めねばならない。いちいちハイクオリティなBBQのかたわらで、芋煮はやたらボリュームのある副菜の一つでしかなかった。イモニストとして今後の精進が求められる。

 

f:id:nadegata226:20181216093011j:plain
f:id:nadegata226:20181216093015j:plain
映えるBBQたち


 

 

最後に。

簡単でおいしい芋煮だが、ひとつ注意を付け加えたい。それは、芋煮の宗教性について。ヤマガタ派とミヤギ派が二大派閥で、その正統性を争っている最中らしい。牛を神聖な捧げものとして醤油で煮るヤマガタ派に対して、豚を味噌で煮て邪気を払うミヤギ派。ドグマの違いからお互いに「そんなもの豚汁だろうが」「農業の貴重な動力源を食うな」と罵り合う芋煮戦争の様相だ。となれば当然、ネットの海には芋煮警察が暗躍し、法的手続きを無視した芋煮裁判も非公式に執り行われているのだろう。そこで要らぬトラブルに巻き込まれないように、この記事では一貫して中立性を保った記述をこころがけた。

そのつもりだったが、冒頭の写真があきらかに豚肉で味噌だった。だって豚肉は安いから。結局、資本主義とマッチした宗派が強いのだ。