飲み会でビールばっかり飲む村の住人より一言

おれはビールが好きなので、居酒屋にいっても基本的にビールしか飲まない。席に着くなり「とりあえず生中」だし、2杯目3杯目と杯を重ねてもやはり生中である。

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ただ、ラストオーダーですと言われればそこはさすがに生中。「オイもう一軒だ!ジュリアンいくぞ!」と上司いきつけのスナックにつれていかれれば、まあ致し方なく中瓶である(ジュリアンにはビアサーバーがない)。

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そうすると、たいていの人はこう言う。「そんなにビールばっかりだとお腹いっぱいになるでしょ」。

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わからない。おれにはそれがわからない。お腹いっぱい、なりますか。これは10年ほど前に酒を飲み始めて以来、一貫して感じている疑問だ。おれは普段、コンディションがよければ生中で7〜8杯くらい飲んでいる。3杯目くらいから酔いは回る。5杯も飲めば自分でもかなり酔ってるなという感じがしてくる。そろそろビールがきついな、おいしくなくなってきたなと思うころだ。ただそれはアルコール摂取量の問題である。お腹いっぱいだからやめておこう、とはならない。もしかしたらおれは「飲み会でビールばっかり飲む村」の末裔で、特殊な遺伝子を受け継いでいるのかもしれない。

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「ビールでお腹いっぱいになるよ村」の住人によれば、犯人は炭酸であるという。ビールの泡あわがお腹に溜まるのだという。そんな馬鹿な。だって君たち、そんなこと言っておきながら、平気な顔して2杯目にハイボールを頼んだりするじゃないか。

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そんなわけでおれはずっと、ビールでお腹いっぱい村というのは、ウイスキーや焼酎の業界団体から補助金を受けているか、あるいは本当はビールを飲み続けたいけど痛風を患っているんだと思っていた。

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ところが最近だ。何かの飲み会でこの話を同僚にしたところ。おれは唐突に理解してしまった。同僚いわく。「ああ、きみ会食でもほとんど何も食べないもんね」。

 

え、なんですって。

 

そういうタイプの人間がいることはもちろん知っている。「酒とメシは別々だよ村」の住人だ。ただそれは、遠い遠い外国の話だと思っていた。おれが知っているあの村の住人というのは、主に角打ちや安酒場を住処としていて、酒を飲むことにストイック。つまみは乾き物かお新香。顔を真っ赤にしながらぐいぐいと飲み続け、最後に完全に据わった目つきで「うめ茶漬けぇ、ひとつっ!!」と大声で叫ぶのだ。

 

おれは違う。たしかに大食らいではないが、ビールを飲みながらちゃんと鳥の唐揚げやソーセージも食べるじゃないか。

 

別の同僚がいう。「でも炒飯やポテトみたいな炭水化物には絶対手を出さないですよね。ていうか今も、皿の上に最初にオーダーした餃子残ってますけど」。

 

う…。そうか。そうだったのか。おれは酒を飲むときはメシを食わないのか。だからビールを飲み続けても腹がいっぱいになるとは思わなかったのか。たしかに言われてみれば薄々、飲み会でみんなよく食うなと思ってはいた。

思い当たる節もいくつかある。結婚式のコース料理のように自分のペースで食事ができないときは、高確率でメイン料理を残していた。なんか結婚式って緊張してご飯があまり食べられないよなんて笑いながら、新婦が感謝のお手紙を読む段になってもしつこく瓶ビールを給仕係にオーダーしていたのだ。

 

結局のところ、そういうことなのだ。おれは「飲み会でビールばっかり飲む村」だけでなく「酒とメシは別々だよ村」の血も引いていたのだ。物語の終盤で、自分の意外な出自が明らかになった漫画の主人公のような気持ちだ。

 

なんて大袈裟に言ってはみたものの。酒を飲むというのは、基本的にパーソナルな行為だ。人さまに迷惑をかけない範囲で、何をどう飲もうが人の勝手である。もっと若いときならいざしらず、30にもなると酒の飲み方についていちいち人から指摘されることもないし、自分の飲酒習慣について深く考える機会などない。そんな中で、長年にわたり無自覚だった習慣が明らかになって大変驚いたと。まあそれだけのお話。一つ記事を書いたらいい時間になったので、そろそろ居酒屋も開いたでしょう。とりあえず生中で。

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