黄金は北方よりもたらされる
黄金は富。黄金は財。黄金とは、貴重なものの代名詞。大航海時代には胡椒一粒は黄金一粒などといったもの。ならば菓子で例えればどうか。フィナンシェだろうか。あれは金塊を模した形状だけか。では黄金糖か。あれはべっこうのような色味が似ているだけだ。それならば、やはりマルセイバターサンドだろうか。
この黄金は、北方に浮かぶ島よりもたらされる。仕事がら常より諸国を旅し、また客人多く訪ねくる我が職場には、各地の産物が集まる。中でも格別の威容を誇り、格別の喜びをもって迎え入れられるのがこの黄金。小麦と乳のインゴット。
かの島では、人よりも多くの牛が住むといい、その乳の美味なることは広く知れ渡る。幾許の乳を練り上げ、小麦菓子で挟んだこの黄金は、風味絶佳にして滋養豊潤。口中来福にして栄養満点。また過剰な熱量に溢れることでも名高い。一つ165kcal。
美味であることもさることながら。この菓子は黄金であるからして、換金性がある。
先日は職場に箱単位で大量の黄金が持ち込まれたことで、一つの経済圏が生まれた。みな、こぞって黄金を得るための取引を望んだ。平均的な相場としては、黄金ひとつで板チョコや缶コーヒーが購える。東京銘菓 ごまたまごなら、ふたつに相当する。
鈍く光沢を湛えた赤い輝きは、賢人の目をも曇らせる。手に取ればずしりと確かな、そして甘美な重みが感じられ、いかなる堅物も弛緩させる。まさに現代の山吹色のお菓子。
ただしいかに黄金といえど、価値は不変ではない。
後生大事に出し惜しみすると、いつのまにか品質が劣化して市場価値が暴落することがある。購入後は冷暗所に保管し、お早めにお召し上がりください。