先生、チゲ鍋はカレーに含まれますか

最近、iPhone撮った写真の管理をGoogleフォトに切り替えた。主にストレージの容量を食わないための施策だったが、思いのほかよく使うようになったのはキーワード検索の機能。「時計」や「赤ちゃん」などのキーワードを打ち込むと、ちゃんとその言葉にあった写真をピックアップしてくれる。もちろんiPhoneのフォトアルバムにも同じ機能はあるけど、Googleのほうがまさに探している写真を探し出してくれることが多く、さすがは検索エンジン界のガリバーの面目躍如といったところ。

 

 

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例えばこんな具合に、いつもビールばかり飲んでることもすぐわかる。

 

 

 

ただ先日。以前食べておいしかったカレーの写真を探していたところ思わぬ脆弱性を見つけた。Google先生、恐らくカレーが苦手でいらっしゃる。

 

 

 

 

先生の実力を計る

もちろんそこは天下のGoogleですから?ユーザーが満足できる一定のレベルはきちんと担保されているわけです。では早速、第一問。これはなんでしょうか。

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Google「カレーです」

 

失礼失礼、簡単すぎましたな。では少し難度を上げて。

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Google「カレーです」

 

おお、流行りのスパイスカレーも守備範囲ですか。ではこちらは?

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Google「カレーです」

 

素晴らしい。てっきり色味で判断してるのではと踏んでおりましたが、こういうグリーンカレー系もいけるのですね。では先生、これはどうですか…?

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Google「カレーです」

 

すいません、先生を試してしまいました。これ、カレーのように見えてハヤシライスなんです。ふふ、意地悪してごめんなさいね。

このように、先生はカレーを正しくカレーとして認識する能力をお持ちだ。間違えたハヤシにしたって、ちゃんとカレーらしい要素を見つけてカレーと判断しているのだ。さすがの実力。ただ問題はここからである。

 

 

 

 

カレーの拡大解釈がすごい

俺のフォトアルバムの中から、先生がカレーとして提示してきた画像はおよそ50点。そのうち本物のカレーは…実はたったの10点だけである。つまりあとの40点は、人間にとってはカレーではないのだが、Googleはカレーだとおっしゃるわけである。先生らしくもない、一体どうされたのですか。

 

 

 

 

例えばこちら。先生、お気持ちはわかりますが、これはカレーではございません。チゲ鍋でしょう。

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Google「カレーです」

 

 

先生!それはウズベキスタンのラグマンでございます。一見カレーに見えなくもないですが米ではなく、野菜たっぷりでトマト風味のおいしい麺料理でして。 

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Google「カレーです」

 

 

先生、恐れながら申し上げます。こちらはモンゴルのスープ、羊と野菜を煮込んだノゴトイシュルでは。

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Google「カレーです」

 

なんだかどれも絶妙なラインをついてくる。薄目で少し離れたとこから見たら、まあカレーかなっていう気がしないでもない。ただ学校の給食でカレーの日にこれらが出てきたら、子どもたちはもう一日中悲嘆にくれるだろう。特にノゴトイシュルなんかは「ルウを入れ忘れてます!」って猛抗議がありそうだ。だが、Google先生の拡大解釈はこんなものでは止まらない。

 

 

先生…これは中国甘粛省がルーツの蘭州牛肉麺です。最近日本でも静かにブーム到来で、手延べ麺に澄んだ牛骨スープ、辣油のアクセントがクセに…

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Google「カレーです」

 

これはボルシチですからね!ロシア料理の代表的なスープで、トッピングされたサワークリームを溶かすとたっぷり刻んだビーツの甘みが際立つ!

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こっちは台湾の牡蠣オムレツ、蚵仔煎!屋台の定番料理の一つで牡蠣の旨味に甘辛のタレがよくあうから、ボリュームたっぷりでもペロリといけちゃう…!

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これはエジプトのコシャリーーー!!コメ、マカロニ、パスタのハイカーボ三重奏!!そこにトマトソースが抜群の相性でフライドオニオンもいいアクセント、ジャンクな味付けがクセになるうまさーーーー!!!

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Google「全部カレーです」

 

 

 

なんでカレーの解釈をそんなにグローバルに広げようとするんだ先生。俺があちこち旅して回って、あれが美味いこれも美味いと喜んでいたものは、全部カレーだったのか。(ちなみにコシャリと牛肉麺は現地ではなく日本のお店です)

 

 

カレー戦国時代に終止符を打つ者

ここでふと思い当たった。カレー業界では最近、「麻婆豆腐はカレー」*1というラディカル派閥が勃興していると聞いたことがある。

人気ジャンルの宿命とも言えるが、カレー界の派閥争いはもはや泥沼化している。日本向けにアレンジされたカレー派 VS オリジナルを尊重するスパイスカレー派の争いを主戦場として、その代理戦争たるナン派とライス派の戦いもまた収束の気配が見えない。一方でサラサラ派とドロドロ派の小競り合いも各地で頻発しており危険な火種だ。まさにカオスである。まさに群雄割拠である。では翻って、このカレー戦国時代にあってGoogle先生の教えはどうだ。

 

カレーに貴賤なし。汝の隣家のカレーを愛せよ。天はカレーの上にカレーをつくらず、カレーの下にカレーをつくらず。チゲ鍋はカレー。ボルシチもカレー。すべてはカレー。諸行カレー。

 

なんと寛容な考えであることか。Googleの前では、ドロドロもサラサラも関係ない。カレー戦国時代を終結させ、太平の世をもたらす救世主はGoogle先生しかいないのかもしれない。

 

ところで先生、これは何ですか。

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Google「カレーです」

 

先生、それは紅茶です。もしかして先生は異端の中の異端と目される「カレーは飲み物派」をも救おうというのだろうか。そうだとすれば慈悲深すぎるし、ディープラーニングがすでに恐ろしい領域まで来ている。

 

 

ふん。ラーメンというのかい?

せっかくなので、この勢いのまま先生の寛容さを「ラーメン」でも発揮してもらうことにした。日本人の二大国民食、揃い踏みである。

 

こちらはどうですか、先生。

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Google「ラーメンです」

 

まあ、このあたりは基本ですね。こちらはいかがでしょうか?

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Google「ラーメンです」

 

そうそう、日本には地域ごとに多様なラーメンがあるのです。ここで下手な判断をすると戦争が起きますからね。お次はどうですか。

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Google「ラーメンです」

 

ご名答。そうなのです。お店で食べるのもラーメンですが、家庭で食べるインスタントもまた正しくラーメンなり。これが日本のラーメン文化。しかし先生。これはどうなんでしょう。

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Google「ラーメンです」

 

いや、まあね。少し難しいのはわかるけど。うーん。いいでしょう。このさい蕎麦もうどんもラーメンです。それが寛容な心というものですよね。なぜニシンそばの画像検索をキャプチャしていたのかについては今は内緒です。

 

でもね、先生。さすがにこれは黙ってられませんよ。

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Google「ラーメンです」

 

いくら先生でも、これは暴挙と言わざるをえない。野菜とラーメンを見間違えるなんて。人間界では、ラーメンは体に悪い食べ物の代名詞。野菜とは対極の存在だというのに…

 

あれ、なんか最近そういうのtwitterで聞いたな。

 

 

 

 

 

 

先生…もしかしてあのメガヒットツイートのオマージュだったんですか。敵わないっす。俺、ずっと先生について行くっす。

 

 

 

 

 

 

*1:「粘性がありスパイスが効いてメシにあう麻婆豆腐は、もはやカレーである」という革新派の急先鋒