屋久島のベストシーズンはいつなのか 前編

師走。あと数日で新年を迎えようかというくらいの年の暮れ。俺は港にいた。

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たぶんあの船のうちのどれかに乗って、俺はこれから屋久島にいくのだ。

 

待合所にアナウンスがかかる。今日は波が高く出航が遅れている。という。

 

屋久島は鹿児島市から2時間弱の距離だけど、外洋に出るため海が荒れやすく、船の遅延・欠航は日常茶飯事らしい。

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手持ち無沙汰で、手元のガイドブックをめくる。曰く、屋久島は世界屈指の自然遺産の島である。ベストシーズンは新緑のまぶしい春。だが夏は、海や川も楽しめて屋久島の自然をフルで味わえてお得。もともと雨の多い屋久島にあって晴天率が最も高く、紅葉も楽しめる秋も捨てがたい。なるほど、なるほど。それで、冬は。冬はどうなんだ。この年の瀬にしか休みの取れなかった悲しい勤め人は、どのように屋久島を楽しめばよいのだ。

 

というかそもそも、もしこのまま船が出なかったら市内で泊まるところを探さなければ。島の宿にもキャンセルをいれないと。それなら明日の朝の船も予約して…とぼやぼや考えているうちに、ぴんぽんぱんぽん。出航だ。錨を上げて、帆を立てろ。

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高い波を切り裂いて、船はびゅんびゅん滑る。ジェットフォイルというやつだ。時速80kmで海面を飛ぶのだ。海面を高速道路並みのスピードで走るのだ。これはなかなか他では味わえない、爽快な乗り物である。しかし俺は船に弱いので、目を瞑りじっと座していた。

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到着。鈍色の空と、ボツボツと粒の大きい雨に迎えられる。屋久島は市内よりも心なしか暖かい気がする。少なくとも本州よりは確実に暖かい。

 

この日は宿に直行。宿は大事である。何せ年末年始をそこで迎えることになるのだから。町の中心部から少し離れているけど、新しくてこじんまりしていて、個室のあるところにした。

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海沿いの坂道をぐんぐんと登る。あれだ、見えてきた。東京から移住してきたというご夫婦がオーナーだ。二人揃って出迎えてくれる。おとうさんはよくしゃべる、サービス精神の塊みたいなひと。おかあさんは江戸っ子らしくチャキチャキしてるけど、言葉の一つ一つが優しいひと。

 

この日は疲れたので町には出ず、宿の夕食をいただく。

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うひゃあ、うまい。名物のさば節を使った和え物から、地魚の刺身に焼き物、裏庭の原木からとったしいたけなど。怒涛のご馳走だ。おかあさん、料理上手ですね。

 

「ビールもいいけど、せっかくの屋久島だからね」と。
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おとうさんからのサービス。「三岳は日本中で買えるけど、お湯割りが飲めるのは屋久島だけ。なぜなら屋久島の水が一番合うから」。うんちくを語るおとうさん。「サービス、サービス!」と結局、3杯もいただいてしまった。明日は早朝から山に登るのでこのあたりで失礼させてもらった。部屋も静かで清潔で、ころんと寝入った。

 

 

翌朝。

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おかあさんのつくったお弁当をもって山に入る。標高が上がれば雪が積もる場所もあるらしい。簡易スパイクをはく。

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白谷雲水峡。
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道は整備されていて歩きやすい。

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もののけ姫の作画の参考にされたとされる森。

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ジブリが人気のアジア各国からの観光客も多い。

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ハイシーズンには渋滞ができるほどというが、今なら自分のペースでぐんぐん進める。

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あたりが一望できる人気のスポットも、独り占め。こんなにゆっくり写真が撮れることはないようだ。

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屋久島のシンボルといえば縄文杉に違いはないが、辿り着くまでの行程を考えるとそう安易にはおすすめできるものではない。そこいくと白谷雲水峡はアクセス至便。行程ゆるやか。見どころ満載。この写真の弥生杉なんて、バス停からものの15分で拝めるのにたいへん立派なものである。

 

下山すると、おとうさんが近くまで迎えに来てくれるという。「早かったね、さすが若者!せっかくだから、暇なら島をぐるっと車で回ってみる?」親切な申し出に乗っからせてもらう。

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海亀が産卵する海岸(雨)
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灯台から眺める入江(雨)
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屋久シカ(曇り)
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滝(小雨)
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高台からの眺め(晴れ)

 

島をぐるっと1時間半、ガイド付きの豪華な周遊ツアーだった。相変わらず天気が悪いことを除けば最高にぜいたくな時間だ。夕飯は町で食べてみたかったので、途中で車から降ろしてもらう。おとうさんは頼まれてもいないのに、別のトレッキング帰りの宿泊客の様子を見にいくらしい。きっと生来の世話焼きなのだ。

 

さてこの日の夕飯は、島一番の居酒屋ともいわれる「若大将」である。ここの主な特徴としては、若大将が西郷さんに激似である。もうヤケクソにそっくりである。鹿児島に住む人間が西郷さんに似ているというのは、ネタとしてはベタすぎるし、本人はどう思っているのだろう。「似てますね!」と1万回くらいは言われているだろうから、触れないほうがいいのか。いやいや、ここはちゃんと似てますねと伝えるのが観光客としての正しい振る舞いだろうか。正解が見出せぬうちに料理がくる。

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魚がとにかく全部うまい。写真4枚目のお茶漬けなんか、これまたヤケクソのように刺身がてんこ盛りでおかしい。名物の「首折れサバ」が不漁だったことだけが心残りである。

 

死ぬほど腹がいっぱいで、ふらふらしながら宿へと歩いて帰る。風呂から上がると、おかあさんがお茶を入れてくれた。ありがとうおかあさん。おとうさんも、今日は車でいろいろ連れて行ってくれてありがとうね。「僕はこの島を愛しているからね、屋久島にきてくれる人には、可能な限り島のいいところを伝えたいんだよ」。それにしたって、親切心にも限度というものがあると思うが、それもこれも、人の少ない閑散期に来たからこその幸運なのだろう。

 

 

後半へ続きます。

 

 

るるぶ屋久島 奄美 種子島'20 (るるぶ情報版地域)

るるぶ屋久島 奄美 種子島'20 (るるぶ情報版地域)

 
屋久島ブック2016

屋久島ブック2016

 

 

ちょっとビール買ってくるわ、アメリカで

アメリカのクラフトビールが大好きである。したがって渡米したときはいつも、しこたまビールを飲んでしまう。たとえ時差がつらくても。帰りのフライトが早朝便でも。自分を追い込むように、必要以上に飲んでしまうのだ。しかし当然ながら、滞在中に飲めるビールの量には限りがある。そこで先日アメリカを訪れた際、俺はこの愛しいビールたちを日本に連れ帰ることにした。

え、お酒って海外から持ち帰れるの?と疑問を持つ人もあろう。なに、簡単なことである。スーツケースを開ける。ビールを入れる。スーツケースを閉める。ほらね。キリンを冷蔵庫に入れるようにシンプルだろう。

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すごいぜアメリカのクラフトビール

ビールをスーツケースに詰めるためには、ビールを買わなければ話にならない。まずはスーパーマーケットへ。どんなスーパーでもよいのだが、大規模な店舗であればなおよし。下の写真のように、きっと素晴らしい景色が拝めることだろう。

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壁一面のビールという絶景。この30mほどのショーケースのうち、ざっと8割がいわゆるクラフトビールである。圧倒的、というかもはや暴力的な品揃えだ。

 

アメリカのビールといえば、バドワイザーを抜きには語れない。単純に世界一の生産量を誇るビールであり、マクドナルドやコカコーラと並んでアメリカを象徴するメガブランドの一つである。しかし同時に、アメリカは個性豊かなクラフトビールの一大市場でもある。なんと全米ビール市場のうち、クラフトビールは金額ベースで24%を占め、その額は276億ドル(約3兆円!)にのぼる。単純比較はできないが、日本のビール大手5社の売上合計、3.3兆円に匹敵すると考えるといかに規模が大きいかわかる。

クラフトビールの存在感は数字の上だけでの話ではない。バーやレストランはほぼ間違いなく地元のビールを揃えているし、スーパーで地元のビールを買うとレジで「いいの選んだね、これは最高だよ!」とかやたらと嬉しそうに話しかけてくる。反対に近隣の州のビールを買うと「あら、こんなビール初めて見たわね」みたいな嫌味を言われたりもする(もちろん冗談ぽく)。

日本でも何度かのブームを経て、ずいぶん身近な存在となったクラフトビール。だが地域への深い愛情をもつアメリカの場合はもはやブームなどではなく、生活にしっかり根付いた文化と呼べる域まで達しているのだ。

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スーパーの陳列棚もやたらと"LOCAL"推し。

 

 

ビールたちの過剰な主張

さて種類が多いのは喜ばしいのだが、これだけの品揃えから選ぶとなると大仕事である。とりあえず一本ずつ買って、できるだけたくさんの種類を揃えたい気もするが、ビールの小売は6缶セットが基本なのだ(バラ売りも一応ある)。

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こんな風にキャップ付きか、箱入りになっている。スーツケースの空きスペースを考えると、これは厳選しなければならないぞ。

 

しかし改めてショーケースを眺めると、どれもデザインが凝っている。原色と派手なイラストが乱れ咲き、「俺だ!俺を買え!」という強い主張を感じる。

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アメコミ風にパンク風。愛国心を煽るものも。なるほどこれだけ競争が激しいと、まずは缶のデザインで目立っていかないと勝ち残れないのかもしれない。俺もいくつかジャケ買いをしつつ、好きなスタイルや製法のユニークさなどを考慮して、以下の通りお買い上げとなった。

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スーツケースにときめきを詰めて

さあいよいよ、35リットルの小型スーツケースに詰めていく。旅先において、スーツケースとは小さな自分の家である。必要な衣類や下着、衛生用品、緊急用の薬、各種電子機器に電源ケーブルなど、少しでも自宅と同じように安全かつ快適に過ごすための道具を、最小限にまとめたのがスーツケースなのだ。ではこのスーツケースの空間を最大限生かすにはどうするか。ここはもちろん、米国人をも唸らせた、こんまりメソッドである。

今回、俺は人のカネで渡米している。平たく言えば出張というやつで、往路のスーツケースには先方への手土産や、相手方に渡す資料、サンプルなどのビジネスライクなグッズがぎっしり入っていた。これらはこんまり先生のいうところの、まったくときめかないものであるので、出張の道中でさよならしてきた。さらに旅人御用達のテクニック、「古い下着捨てて帰る作戦」で大量のときめかないものとお別れだ。よし、スペースできた!

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ではまず、緩衝材を敷き詰める。なぜこんなものがあるのかというと、普通に俺が日本から持ってきたからだ。

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続いてときめきを並べていく。一つ一つ、丁寧に。やはり片側では収まらなかったか…。今晩のうちに少し飲んでしまおう。今回は持参するのを忘れてしまったが、大きなゴミ袋を使うのもよい。缶をゴミ袋の中にすっぽり被せてからスーツケースに収めれば、万一の流出事故でも被害を多少軽減してくれる。

それから大事なのは、とにかく隙間を埋めること。まずは柔らかい箱などで大きなスペースを潰す。

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ついで、丸めた靴下やお土産のお菓子などでさらに小さな隙間をぎゅうぎゅう詰めて、固定する。

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最後にシャツなどの大きめの衣類で全面をカバーする。お見苦しい洗濯物で申し訳ない。

以上、世界一ときめくスーツケースのパッキングが完了である。ときめき総量がインクレディブルな感じになってしまった。とても出張帰りのかばんとは思えない。あとは中身の無事を祈って持ち帰るのみ。

 

俺はうまいビールを手に入れ、納税者になる

国をまたいで酒を持ち込むというのは、ほぼ世界中で何かしら制限のかかる行為である。であるからして、こうして記事にまとめる以上、とにかくリーガルにいきたい。その上で関門は2つある。

 

①まずは出国時の機内持ち込み。

当然のことながら、液体なので預け入れ荷物となる。ここで航空会社の重量制限をパスしなければならないのは言うまでもない。小さなスーツケースにしては異例の重さだが、ここは問題なくクリア。ただ実はもう一つ懸念があった。それはアメリカにおける航空機へのアルコール持ち込み量制限である。*1

米国政府出版局によれば、要するにアルコール24%を超える酒類には量の制限があるのだが、24%以下に関しては量に関する記載がない。ビールはもちろん24%に満たないわけだが、これは無制限ということでいいのか…?わざわざ確認してやぶ蛇になるのも嫌だ。だがあとからCIAに付け狙われるのはもっと嫌なので、思い切って空港のカウンターで確認してみた。

「この荷物、ビール入ってるんだけど」

「ああん?ビールだって!?これ全部か!?」

「(このおじさん怖…)重量の半分くらいかな」

「どこのだ!?」

「ほぼテキサス(出国する空港がある)です」

「Wow!!!あんたクレージーだな、最高!わはは」

ということで、無事にパスした。(したのか…?)

 

②続いて入国時の税関申告。

免税範囲を超えて酒類を日本に持ち込むということは、輸入と同じなので、自分で酒税を払わなければならない。機内で配られる黄色の税関申告書。これに持ち込み内容を記入する。

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表面の「免税範囲を超える購入品・お土産品・贈答品など」にチェック。裏面には詳細な本数や量を記入。

荷物をピックアップしたところにある税関申告で、用紙を提出する。

「このスーツケースにビール入ってます」

「はいはい、酒類の持ち込みね…多くない!?」

とここでもアメリカと同じやりとりがある。電卓でかちゃかちゃと計算し、書類を渡してくれる。これをすぐ近くにある銀行窓口に持っていき、現金を支払うだけ。簡単なものである。ポイントはとにかく申告は正直に、ということに尽きる。そもそも2リットル少々までは免税範囲だし、それを超えても1リットルあたりたった200円なのだから。

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よし、納税完了。しかし消費税以外で直接税金を払う機会なんて無いから新鮮だ。これが意外と、どうしてなかなかいい気分である。みんな見てくれ、俺は納税者さまだぞ。うまいビールを手に入れたうえ、酒税が払えるなんて最高じゃないか。

 

 

ようこそ我が家へ

自宅に着いて、スーツケースを開ける。流出事故は…なし!完璧な状態でビールを持ち帰ることに成功した。早速、冷蔵庫に収納してみる。

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これはいい眺めである。アメリカからきたスター軍団のビールが、我が家の冷蔵庫を埋め尽くしている。出発前から自宅にいた、第3のビール(本麒麟)はちょっと所在なさげだ。ごめんね、君の普段の働きにはとても感謝しているよ。

 

 

・・・

いかがだっただろうか、アメリカからビールを買ってくる方法。本当に身も蓋もなく、スーツケースに入れるだけなのだけど。最後に今回買ってきた中で、ひときわユニークなビールたちを紹介したい。アメリカのクラフトビール、派手なのは外観だけではない。生き残りをめざす中で、味の方向性もどんどん先鋭化された、クレイジーなやつらだ。以下、厳選した4本である。

 

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こちらはウィートと呼ばれるタイプのビール。小麦を使ったビールというのは優しくて甘くてまろやかな風味が多いのだけど、まずゴリゴリに味が強い。パンかビスケットを食ってんのかというくらい小麦が強い。そしてそこにオレンジ風味が効いている。アクセントとかではなく、小麦風味と真っ向から殴り合うかのようにオレンジが効いている。ようするにめちゃくちゃ濃い。そしてうまい。

 

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これはサワーと呼ばれるタイプ。サワーの主な特徴としては、死ぬほどすっぱい。ただギンギンにすっぱい中で、副原料のラズベリーがちゃんと生きている。ラズベリー風味というのは何か。酸味である。酸味に酸味をぶつける。酸味天国、あるいは地獄。うまいのか?それは俺にはよくわからない。

 

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これはゴールデンエール、俺の大好きなタイプ。ゴールデンエールにはあっさりライトと、どっしり重たいのがあるが、これは前者。しかしこいつの場合は、なぜかそこにバニラフレーバーが加わっている。味はなんというか、未知。もう飲んだのに、今も未知。人類にはすこし早かったのかもしれない。

 

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これはベルジャントリペル呼ばれるタイプ。ベルジャンというタイプ自体は優しい甘みで大好きなのだが、トリペルとつくと急にアルコール度数が暴力的になる。これも10%を超えているので一発でべろべろに酔う。ノックアウトされる。ただうまい、ものすごく濃くてうまいぞ。いや、ホントに飲んだっけな。記憶が曖昧だな。

 

 

クラフトビール革命 地域を変えたアメリカの小さな地ビール起業

クラフトビール革命 地域を変えたアメリカの小さな地ビール起業

 

 

 

*1:https://www.ecfr.gov/cgi-bin/retrieveECFR?gp=1&SID=bba5ad06518b529c94e1d67a3270196b&h=L&mc=true&n=pt49.2.175&r=PART&ty=HTML 

(i) Not more than 24% alcohol by volume; or

(ii) More than 24% and not more than 70% alcohol by volume when in unopened retail packagings not exceeding 5 liters (1.3 gallons) carried in carry-on or checked baggage, with a total net quantity per person of 5 liters (1.3) gallons for such beverages.

フルーツポンチよ自由であれ

10月にして、しつこい夏の気配がようやく去った。今年は涼しい日が数日続いても、すぐに暑さが盛り返してきていたが、もはやこれまで。2019年の夏、完全撤収。ところで俺はこの暑い夏を乗り越えるにあたり、フルーツポンチばかり食べていたことを、ここに報告させてもらいたい。

 

 

はてフルーツポンチとはなんだっけな。むかし、実家の冷蔵庫の二段目には、よくフルーツポンチが入ってた。半透明のでかいタッパー。缶詰の果物。ミルク寒天。べたべたに甘いシロップ。定番の、安っぽいおやつ。でも俺が夏ごとせっせとこしらえていたフルーツポンチは少し違っていて。なんというか流行りの言葉で言えば、もう少しクールでセクシーなやつなんだ。

 

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基本構成要素。フルーツが主役であるわけだけど、カットフルーツで十分。もちろん生のフルーツを買ってもいいけど、これは剥かなくていいし切らなくていいので最高。しかもスーパーで夜に買うと30%オフなのだぜ。

 

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この日はパインとスイカを主役に。個人的にパインは、フルーツポンチにおける四番打者。甘くてジューシーで、当たり外れが少ない。率が残せるタイプの四番だ。

 

脇を固めるのは冷凍フルーツ。最近、コンビニで便利なのが売ってる。

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こういうのを自宅の冷凍庫でベンチ入りさせておくと、選手層が厚くなってよい。今日はユーティリティプレーヤーのブルーベリーを起用。

 

ソーダで、爽やかさを。

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プレーンな炭酸水は無難。だけど果汁入りもさっぱりしていい。好みに応じて、キリンレモンとかスプライトのような甘いソーダでも。

 

さあ、グラスに盛り付けて。グラスは、そうだな。できれば広口で短い足のついたやつがいいな。

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一番下にロックアイスを入れておくと、いつまでも冷たくていい感じ。

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ソーダを注ぐと、ブルーベリーの色が移って思いがけずきれい。

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甘酸っぱくて冷たくておいしい。暑くて食欲がなくてもさっぱり食べられるし、なんとなくビタミンが摂れてる気分になる。でもフルーツポンチの一番えらいとこは、とにか自由で懐が深いということ。なんでも好きな果物をいれて、自由にアレンジしながら、毎日でも食べることができる。

 

 

 

・・・

たとえばとある月曜日。週初めというのはなぜか忙しい。ただでさえ休み明けで気が乗らないのに、ぐったりきてしまう。そんなときはこれで気分をアゲるよ。

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キッチンばさみで半分に。あとはスプーンで適当にくり抜いて。

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さくせんは「あらいものをすくなく」。

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アゲリシャス。
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アゲアゲリシャス。

 

 

月曜が忙しいときはたいてい、火曜も忙しい。ということで、今日は好物のグレープフルーツで。

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きれいに薄皮が剥けるとうれしい。意外とたっぷり量があるからな、

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今日はグレープフルーツだけで、

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いいかなと思ったけど、

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そういえば冷凍庫にガツンとみかんが一本残っていたのだった。フルーツポンチは懐が深いやつだから、ラフに突き刺してしまおう。

 

 

水曜日。午後から雨が降り、蒸し暑さがよみがえる。俺はこの暑さを逆手にとって、夏の名残を楽しむ。

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たっぷりの角切りりんごにラムネ。からんころんと瓶を傾ける。

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いつもは無糖の炭酸水ばかりだけど、やっぱり甘いソーダのフルーツポンチもいいな。

 

 

木曜日はぶどうが主役。

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このぶどうは皮ごと食べられる、気の利いたやつです。

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まだ木曜だけど、こういうのもいいでしょ。

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だって本来、フルーツポンチというのはアルコール入りのカクテル的なデザートらしいですよ。ちょっとフライングだけど。プチ週末気分ということで。

 

 

さあいよいよ金曜日。みんな、おつかれ。今夜はパーティーだ。

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ふひひ、プレミアムにいこうぜ。

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桃あっま。バニラアイスうっま。これ別にソーダは必要なかったな。

 

 

 

・・・

と、まあこのようにフルーツポンチを自由に楽しんだ夏だった。でも、おいしいものはいつ食べてもおいしいので。皆様におかれましても、実りの秋にはよいフルーツポンチライフをお過ごしください。

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ニッカ カフェジン [ ジン 700ml ]

ニッカ カフェジン [ ジン 700ml ]

 

 

先生、チゲ鍋はカレーに含まれますか

最近、iPhone撮った写真の管理をGoogleフォトに切り替えた。主にストレージの容量を食わないための施策だったが、思いのほかよく使うようになったのはキーワード検索の機能。「時計」や「赤ちゃん」などのキーワードを打ち込むと、ちゃんとその言葉にあった写真をピックアップしてくれる。もちろんiPhoneのフォトアルバムにも同じ機能はあるけど、Googleのほうがまさに探している写真を探し出してくれることが多く、さすがは検索エンジン界のガリバーの面目躍如といったところ。

 

 

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例えばこんな具合に、いつもビールばかり飲んでることもすぐわかる。

 

 

 

ただ先日。以前食べておいしかったカレーの写真を探していたところ思わぬ脆弱性を見つけた。Google先生、恐らくカレーが苦手でいらっしゃる。

 

 

 

 

先生の実力を計る

もちろんそこは天下のGoogleですから?ユーザーが満足できる一定のレベルはきちんと担保されているわけです。では早速、第一問。これはなんでしょうか。

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Google「カレーです」

 

失礼失礼、簡単すぎましたな。では少し難度を上げて。

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Google「カレーです」

 

おお、流行りのスパイスカレーも守備範囲ですか。ではこちらは?

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Google「カレーです」

 

素晴らしい。てっきり色味で判断してるのではと踏んでおりましたが、こういうグリーンカレー系もいけるのですね。では先生、これはどうですか…?

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Google「カレーです」

 

すいません、先生を試してしまいました。これ、カレーのように見えてハヤシライスなんです。ふふ、意地悪してごめんなさいね。

このように、先生はカレーを正しくカレーとして認識する能力をお持ちだ。間違えたハヤシにしたって、ちゃんとカレーらしい要素を見つけてカレーと判断しているのだ。さすがの実力。ただ問題はここからである。

 

 

 

 

カレーの拡大解釈がすごい

俺のフォトアルバムの中から、先生がカレーとして提示してきた画像はおよそ50点。そのうち本物のカレーは…実はたったの10点だけである。つまりあとの40点は、人間にとってはカレーではないのだが、Googleはカレーだとおっしゃるわけである。先生らしくもない、一体どうされたのですか。

 

 

 

 

例えばこちら。先生、お気持ちはわかりますが、これはカレーではございません。チゲ鍋でしょう。

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Google「カレーです」

 

 

先生!それはウズベキスタンのラグマンでございます。一見カレーに見えなくもないですが米ではなく、野菜たっぷりでトマト風味のおいしい麺料理でして。 

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Google「カレーです」

 

 

先生、恐れながら申し上げます。こちらはモンゴルのスープ、羊と野菜を煮込んだノゴトイシュルでは。

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Google「カレーです」

 

なんだかどれも絶妙なラインをついてくる。薄目で少し離れたとこから見たら、まあカレーかなっていう気がしないでもない。ただ学校の給食でカレーの日にこれらが出てきたら、子どもたちはもう一日中悲嘆にくれるだろう。特にノゴトイシュルなんかは「ルウを入れ忘れてます!」って猛抗議がありそうだ。だが、Google先生の拡大解釈はこんなものでは止まらない。

 

 

先生…これは中国甘粛省がルーツの蘭州牛肉麺です。最近日本でも静かにブーム到来で、手延べ麺に澄んだ牛骨スープ、辣油のアクセントがクセに…

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Google「カレーです」

 

これはボルシチですからね!ロシア料理の代表的なスープで、トッピングされたサワークリームを溶かすとたっぷり刻んだビーツの甘みが際立つ!

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こっちは台湾の牡蠣オムレツ、蚵仔煎!屋台の定番料理の一つで牡蠣の旨味に甘辛のタレがよくあうから、ボリュームたっぷりでもペロリといけちゃう…!

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これはエジプトのコシャリーーー!!コメ、マカロニ、パスタのハイカーボ三重奏!!そこにトマトソースが抜群の相性でフライドオニオンもいいアクセント、ジャンクな味付けがクセになるうまさーーーー!!!

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Google「全部カレーです」

 

 

 

なんでカレーの解釈をそんなにグローバルに広げようとするんだ先生。俺があちこち旅して回って、あれが美味いこれも美味いと喜んでいたものは、全部カレーだったのか。(ちなみにコシャリと牛肉麺は現地ではなく日本のお店です)

 

 

カレー戦国時代に終止符を打つ者

ここでふと思い当たった。カレー業界では最近、「麻婆豆腐はカレー」*1というラディカル派閥が勃興していると聞いたことがある。

人気ジャンルの宿命とも言えるが、カレー界の派閥争いはもはや泥沼化している。日本向けにアレンジされたカレー派 VS オリジナルを尊重するスパイスカレー派の争いを主戦場として、その代理戦争たるナン派とライス派の戦いもまた収束の気配が見えない。一方でサラサラ派とドロドロ派の小競り合いも各地で頻発しており危険な火種だ。まさにカオスである。まさに群雄割拠である。では翻って、このカレー戦国時代にあってGoogle先生の教えはどうだ。

 

カレーに貴賤なし。汝の隣家のカレーを愛せよ。天はカレーの上にカレーをつくらず、カレーの下にカレーをつくらず。チゲ鍋はカレー。ボルシチもカレー。すべてはカレー。諸行カレー。

 

なんと寛容な考えであることか。Googleの前では、ドロドロもサラサラも関係ない。カレー戦国時代を終結させ、太平の世をもたらす救世主はGoogle先生しかいないのかもしれない。

 

ところで先生、これは何ですか。

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Google「カレーです」

 

先生、それは紅茶です。もしかして先生は異端の中の異端と目される「カレーは飲み物派」をも救おうというのだろうか。そうだとすれば慈悲深すぎるし、ディープラーニングがすでに恐ろしい領域まで来ている。

 

 

ふん。ラーメンというのかい?

せっかくなので、この勢いのまま先生の寛容さを「ラーメン」でも発揮してもらうことにした。日本人の二大国民食、揃い踏みである。

 

こちらはどうですか、先生。

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Google「ラーメンです」

 

まあ、このあたりは基本ですね。こちらはいかがでしょうか?

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Google「ラーメンです」

 

そうそう、日本には地域ごとに多様なラーメンがあるのです。ここで下手な判断をすると戦争が起きますからね。お次はどうですか。

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Google「ラーメンです」

 

ご名答。そうなのです。お店で食べるのもラーメンですが、家庭で食べるインスタントもまた正しくラーメンなり。これが日本のラーメン文化。しかし先生。これはどうなんでしょう。

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Google「ラーメンです」

 

いや、まあね。少し難しいのはわかるけど。うーん。いいでしょう。このさい蕎麦もうどんもラーメンです。それが寛容な心というものですよね。なぜニシンそばの画像検索をキャプチャしていたのかについては今は内緒です。

 

でもね、先生。さすがにこれは黙ってられませんよ。

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Google「ラーメンです」

 

いくら先生でも、これは暴挙と言わざるをえない。野菜とラーメンを見間違えるなんて。人間界では、ラーメンは体に悪い食べ物の代名詞。野菜とは対極の存在だというのに…

 

あれ、なんか最近そういうのtwitterで聞いたな。

 

 

 

 

 

 

先生…もしかしてあのメガヒットツイートのオマージュだったんですか。敵わないっす。俺、ずっと先生について行くっす。

 

 

 

 

 

 

*1:「粘性がありスパイスが効いてメシにあう麻婆豆腐は、もはやカレーである」という革新派の急先鋒

迷子のゲームソフトを案ずる国

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金曜日。日経新聞に気になる見出しがあった。

 

 

「迷子」ゲーム 持ち主やーい

 

 

記事の大筋はこうだ。関 純治さんはファミコンソフトの収集家。かつて全ソフトコンプリートをめざしていたが、お金さえかければそのうち達成できてしまう将来が見えてしまう。そんなときに出会ったのが、手書きの名前入りのカセット。これが"一点モノ"の宝物であることに気づき収集を始める。現在は1000本近くを所蔵し、HPで情報を公開。本来の持ち主が現れれば返還する活動を展開している。

 

・・・

この記事に俺はひっそりと静かな感動を覚えた。

 

昔、友だちの家に遊びにいったら確かによくあった。「まつだ ゆうすけ」ってマジックで直書きしたゲームソフト。ソフトに名前が書いてあると、中古市場での価値は下がる。当然である。買った人にとっては単なる落書きか、もっと言えばかつて他人が使っていたことを主張する、生々しい痕跡なのだから。

 

でもこの人は、価値が下がるところに、価値を見出している。誰が見ても無価値というものでも、当の「まつだ ゆうすけ」にとっては価値があるはずなのだ。ゲームソフトに興奮した時間や、一緒に遊んだり友だちの記憶を内包する、貴重な思い出の品なのだ。こういう発想の転換ができる人は心底、素晴らしいと思う。

 

ところでこの返還活動。世の役に立つ仕事かというと、微妙な当落線上にある。もちろん害をもたらすことはないが、取り立てて社会的意義があるとも言えない。強いていえば、「ギリ役に立つ」くらいだろうか。

 

ポケモンスタジアム金銀」(NINTENDO64)は元の持ち主の兄から連絡をもらい、確かに弟のものだったと確認できた。ただコンボイポケモンも「ゲーム機本体がないので要りません」。そもそも要らなくなったから手放したケースが大半のようで……。(記事より)

 

実際、記事の中でも、今のところあまり役に立っていないさまが正直につづられている。でもきっとこの人は、ある程度のムダをよしとしながら明るく前向きに取り組んでいるのだろう。大勢の人に届かなくてもいい。たくさんのムダの末に、いつか奇跡的な再会があればいい。そんな風に考えているのではないか。

 

役に立たないことに堂々と取り組める世の中はいいものだ。ムダな遊びは、社会に余裕があるかどうかのバロメータの一つかもしれない。一方で世界はいま着実に余裕を失っているわけだけど、余裕がなくなりつつあるこの世界に抗うべく、俺もギリギリ役に立たないことにゆるく挑戦し、情報発信していきたい所存である。

 

ちなみに日経新聞の最終面の文化欄は、定期的にへんな人を発掘してくるのですごい。ドールハウスをつくるおじさんとか、航空会社のノベルティを集めまくるおじさんとか。日本を代表する経済新聞が、商業価値を失ったゲームソフトの話をこれからもしてくれるようなら、案外まだなんとかなるのかな。

 

 

名前入りカセット博物館

https://bonusstage.net/famicassearch/index.php

 

猫が賛助出演して気に入る

はてなブログを本格的に始めて約2か月が経つ(開設からはもっと経つ)。楽しかった経験を忘れないために。自分の好きなものごとを誰かに知ってもらうために。ぽつりぽつりと文書をつむいでいる。人さまの役には立たない。つかみどころがない。脈絡がない。ないないづくしの記事ばかりを書いている。

 

ただそんな文章でも気まぐれに読んでくれる人がいて、とてもありがたいことである。なかでも中央アジアの料理を題材にした記事は、思いがけずたくさんの人に読んでもらえることになった。

 

nadegata226.hatenadiary.jp

 

各種のSNSはてなブックマークに寄せられたコメントは、可能な限り目を通すようにしている。俺の大好きな中央アジアに興味を持ってくれたような意見も多くあり、非常に嬉しい思いであった。さてその中に一つ気になるものを見つけた。

 

 

 

 

 

「고양이가 찬조출연해서 맘에 든다」

 

 

 

ハングル。これは何と言っているのだろう。両国関係の難しいこのご時世である。まさかこんな毒にも薬にもならない記事に悪意のコメントとは考えにくいが、気にはなる。気になるし、正直に言ってその内容を知ることに少しだけ怖い気持ちもある。わざわざ日本語で書かれた記事に向けて、この人が言いたかったことは何なのだろう。意を決してGoogle翻訳にかける。

 

 

 

 

 

 

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猫が賛助出演して気に入る。

 

 

 

 

 

なにこのフレーズ、最高か。なんというか、シンプルな言葉の中にとてつもなく強烈なフックが利いている。「賛助出演」は、意味は推測できるもののあまり聞きなれない言葉だ。固くて事務的、形式的な雰囲気を感じる。なのに、賛助出演しているのは猫。ゆるい。流れをブチ切ってゆるすぎる。言葉の緩急である。全盛期の星野伸之スローカーブを見せられたかのごとく、俺のスイングは大きく空を切る。そして後半の「気に入る」。こなれた日本語なら、ここは間違いなく「気に入った」である。だが敢えての「気に入る」。この言葉遣いに、俺は強い肯定の意思を感じた。ただ単に私が気に入ったというのではない。この世の必然として。あるいは森羅万象の理として。猫が賛助出演していることは「気に入る」ものだと言い切っている。まるで神託のような、そんな力強い断定のニュアンスを感じ取った。

 

改めて、「猫が賛助出演して気に入る」。なんと情緒あるコメントであることか。恐ろしいまでに非凡な翻訳センス。まさに声に出して読みたい日本語。

 

できることなら。俺はこのフレーズが世の中に根づいてほしいと思っている。俺が思うに、日常生活において「猫が賛助出演して気に入る」としか表現しえない事柄は、たまに存在すると思うのだ。

 

例えば俺の家から最寄りのスーパーまでは50mである。近いし遅くまで営業しているので、大いに頼りにしている。ただ俺はたまに150m離れたコンビニまで行く。理由は、こっちの駐車場にはたまに猫がたむろしているからだ。値段は高いし品揃えもスーパーに劣るが、猫がいるかもしれないからコンビニに行くのだ。このような状況をどう表現するべきか。「俺は猫が好きだからコンビニに行く」。もちろん情報としては正しい。ただグッとこない。わざわざ経済原理に沿わない行動をとる、心の機微が感じ取れない。そこで「コンビニに猫が賛助出演して気に入る」である。ほら、情緒が爆発している。エモーションがスパークしている。ネコ好きの皆様におかれましてはぜひ、的確な状況を見つけたらこのフレーズを使ってもらいたい。

 

結びに。この記事でも、中央アジアで出会った猫が賛助出演する。気に入る。

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厳戒態勢の午後には、優雅な紅茶を

少し前のことになるが、6月末に大阪でG20サミットが行われた。関西以外の人にとってはすでに「ああ、なんかそんなのあった…かな」くらい忘却の彼方だろうが、現地に住む人間にとってはそれなりにビッグイベントであった。開催の数日前から敷かれた厳重な警備体制は非日常そのもので、家から通勤するまでの間にもたくさんの警官が立哨。地元関西だけでは人手が足りず、全国の警官が協力して警備に当たる姿も物珍しかった。俺の通勤経路は神奈川県警、千葉県警群馬県警岐阜県警石川県警という布陣で、ヒーロー大集合モノの映画みたいだなと思っていた。

 

さて本題である。かような警戒ムードのなか、会議当日に俺は何をしていたか。正解は、厳戒態勢の帝国ホテルにのこのこ出向いて、優雅にアフタヌーンティーをキメていた。です。

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6月29日。土曜日。最寄駅で降りると、すでに空気がものものしい。トランプはじめ米国首脳が宿泊する帝国ホテルは、重点警備施設の一つ。建物の前の車寄せから、黄色い警戒線がぐるぐる巻き。警察官だってそこら中に歩いている。どう見たって一般の客が気軽に中に入れる雰囲気ではない。しかしここは敢えて正面突破を試みる。

 

「あの、アフタヌーンティーを予約しているんです」

「は……?」

わかりやすく狼狽える北海道警のお兄さん。すみません、警備中にお茶を飲みに来るやつがきたときのマニュアルなんてないですよね。なんとかホテルスタッフに確認してもらい、裏口に案内される。

 

この日に向けて事前にお上から、市民としての正しいふるまいについてお達しがあった。警備の邪魔にならないよう不要不急の外出は控えて、家で横になって映画を観ながらブーッと屁でもこいていなさい、とだいたいこんなところだ。それなのに俺はわざわざ帝国ホテルに出掛けている。しかも不要かつ不急の用事で。邪険にされたり、あるいはお叱りを受けたとしても仕方ない。だがこちらにも言い分がある。人からご招待を受けて3カ月も前からたまたまこの日を予約していたのだ。G20で交通規制やら外出自粛なんていいだしたのはせいぜい1カ月前。G20のほうが後出ししたジャンケンなのだ。念のため直前にホテルに確認したところ「自家用車以外で気をつけてお越しください」とのことで過度な迷惑にはならないと判断。せめて挙動不審な行動で警備の手を煩わせぬよう、できるだけ堂々と振舞うことにした。

 

バリケードに囲まれた通路を通る前に、IDの提示を求められる。人生初、お茶を飲むために身分を証明する。建物に入る前にも、名前を告げて予約情報の確認。このへんでちょっと笑えてきたが、メインホールに入る前に、ダメ押しのように空港の荷物検査ゲートがあった。大喜利か。「こんな喫茶店は嫌だ」の大喜利なのか。

 

帝国ホテル1階 ブフェ&ラウンジ 「ザ パーク」。

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やっと落ち着いて写真が撮れました。えへへ、とてもきれいなところですね。それじゃ予約してた例のやつ、お願いします。

 

 

 

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「ウェルカムドリンクのスパークリングワインです」

おっと、さすがは帝国ホテル。気が利いている。ピンと張りつめた雰囲気の中をマヌケな珍客としてくぐり抜けた俺は、この席につくまでにさんざん冷や汗をかいていたのだ。キリッと冷えたスパークリングを口に含み、やっと人心地ついた気分であった。

 

ほどなくして、係の女性が恭しくメニューを持ってくる。「アフタヌーンティーセットではおひとり様につき、2つのお飲み物をお選びいただけます」。ほうほう、そういうものですか。ウバとアールグレイか何かにしたように思う。

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ティーポットに着せる保温カバー、かわいいですよね。

 

お茶を飲みながら、本日のメニューに目を通す。

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ふむふむ。おいしそうとかおしゃれとか、まあいろいろな感想はあるのだけど、アフタヌーンティーの魅力はこの情報量の多さだと思う。これがドーンと一つのセットでやってくるのだから嬉しい。

 

 

さて、満を持して。

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あら、いいじゃない。都会の3階建ても憧れるけど、こちらの3階建ても素敵ね。スコーンの付け合わせで、クロテッドクリームとジャム、ドライフルーツ盛り合わせもついてくる。

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ティーポットやカップなんかもあわせて、テーブルの上ががちゃがちゃと賑やかな感じになるのがいいんですよね、アフタヌーンティー

 

アフタヌーンティーの正式なマナーでは、下の段から順々に食べるべきとされているらしい。実際にはそんなことは気にせずに、食べたいものから好きなようにたべるのがよろしいわけだが、記事にするにあたってはどうしても順番というものが生じる。便宜上、下の段から一品ずつ説明します。

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こちらが1階のサンドイッチの段でございます。サンドイッチというのは孤高の存在でして。具材を豪華にしようとハンバーグを挟めばハンバーガーだし、ソーセージを入れればホットドッグになってしまう。つまり限られた手札のなかでいかに技量を発揮するかという、非常にストイックな料理なのである。え?カツサンドというものがある?あれはカツサンドという別カテゴリの料理です。ちなみに好きな味噌汁の具を聞いてるのに豚汁と答えるのも同じ理由でルール違反です。

前置きが長くなったが、このサンドイッチに挟まれている具はハム、トマト、レタス。そしてチーズと胡瓜。オーソドックス。老舗ホテルらしく、実に硬派である。それでいてしっかりとうまい。3階建ての基礎を成すのは、そういう芯の通ったサンドイッチなのである。

 

奥にあるのは海老と野菜のマリネ。好きな順番に食べるのがよろしいと書いたが、実際問題、下から順番にいくと3階にお住いのスイーツの皆さんを一気に食べるのはつらい。どうしても途中で違う味付けのものが食べたくなる。そのなかでマリネの酸味は貴重である。普通のアフタヌーンティーであればせいぜい甘味と塩味の往復だが、酸味が加わることで三角食べが実現する。日本人の食事習慣を熟知した最高のアレンジ。さすが帝国ホテルである。

 

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そろそろお客様を2階にご案内して差し上げて。普通、この2階というのはスコーンの定位置となっているわけです。たいていの3階建ての家は真ん中にリビングがあるように、2階といえばスコーン。しかし今日は2種類のキッシュも同居していますね。これはリビングがあるのに隣にサンルームも作り、2階全面を寛ぎの空間にしてしまおうという匠な発想なのです。なるほど道理で(道理で?)このキッシュ、ほんのり温かいんです。温かいお料理は温かいうちに。俺はここからまず手をつける。スモークサーモンのほうは塩気が効いている。もう一つはミートソースの中のゴボウがいいアクセント。どちらも、味がギュッと濃い。甘いものがたっぷりあるからこのへんでうまくバランスがとれている。そしてスコーン。スコーンなんてパサパサで何がうまいのかという人もいるでしょう。いいですか、スコーンの本体はこちらのクロテッドクリームです。

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これをたっぷり。たっぷりと塗りつけます。どうせ全部使い切れやしないんだから。ジャムやドライフルーツもお好みで添えて。クロテッドのこってりした油脂の旨味がボソボソのスコーンに合う。実においしい。しかしそういえば、クロテッドクリームってなんなんだろう。

 

脂肪分の高い牛乳を、弱火で煮詰めたものをひと晩おいて表面に固まる脂肪分を集め作られる。(Wikipedia)

 

あ…これもしかしてウルムじゃないですか。

両者がほぼ同じものとは知らなかった。

 

このあたりでお茶のおかわりが運ばれてくる。ふと窓の外を見ると、ホテル敷地内を巡回する警官も交代していた。そうだ、あまりに居心地がよくてすっかり忘れていたが、厳戒態勢だ。外は暑くてぴりぴりとしていて。中は涼しくてこの上なく優雅。すこし意地悪な話だけど、なんかめっちゃ貴族みたいじゃん。

 

 

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いよいよ、最上階へご案内です。このとき帝国ホテルでは抹茶フェアが行われていた関係で、緑色を基調としています。一番上の段というのは、アフタヌーンティーの顔。最上階でありながら同時に玄関なわけです。余白を生かしてちんまりと上品にまとめられていますね。華美になり過ぎず、むしろ一定の節度が感じられる。俺はスイーツの味の良し悪しはそんなにわからないのだが、指でつまめて一口でぽいっと食べられるところもよい。奥にあるほうじ茶ムースが特においしかった。

 

 

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はい、ナイスアフタヌーンでした。普段は立ち入ることのないラグジュアリーなホテルでも、ランチやティータイムなら気軽にいけるところがいいですね。

 

お会計の前にトイレを済ませようとしたら、トイレの入り口、本当に目の前までご丁寧にご案内されてしまった。そして手を洗って出てきたら、さっきの人が待っている。すみません、ここで勝手な行動したら大変ですもんね。警備関係の皆様、ホテルの皆様、そして会議運営に携わったすべての皆様、いまさらですがたいへんお疲れ様でした。